情報科学研究室の百二十八冊
[] last update: 1998.6.16
目次
情報科学研究室ほうむぺいじへ
このぺいじは,「情報科学研究室の百二十八冊」(秋田大学・教育文化学部・情報科学研究室)と共同で作業しています.掲載している項目は,秋田大学版と基本的には同じですが,こめんと等を付加・変更している場合があります.
このぺいじは,「情報科学研究室(およびそのあたり)の百二十八冊」であって,「情報科学の百二十八冊」というわけではありません.それらも含みますが.その点誤解のなきようお願いいたします.
順次増やして 128 冊にします(それを越えたら目標 256 冊!).
情報科学研究室では文書技術の習得および人間関係の機微を知ることも,学生時代に必要なことであると考えています.また,日本人としての文化を継承し,自ら育った土地を愛するような人物であってはじめて国際的な舞台において自らを説明しうる”正しい”国際人であると考え,そのような教育を行うことが大学を始めとする教育機関の重要な役割の一つとして考えております.
そのためには
- 人を引き付ける技術にたけた文章を読むこと
- 人間の機微をうまく描写している本を多く読むこと
- 人間について深く洞察している本を読むこと
- 日本の古典を読むこと
が効果的であると思われます.
本研究室では以下に揚げる本を必読書として定め,本研究室において卒論を行おうとするものはこのうちの 3 冊以上,また卒論生となり卒業しようとするものは 5 冊以上読むことを強く求めることとしました.:-P
番号は登録された順番しか意味しません.
研究室棲太夫(すたっふ)に限らず,追加項目をめいるでお送りくだされば,棲太夫が味読の上,味わい深かった本は付加させていただきます.書式は,
<DT>書名(著者名) 出版社
<DD>内容
<P>
として送っていただけると助かります.
以下のぺいじにあげられている本も選択の範囲に入ります.(福島大学内のページは見つけしだい加えていく予定です)
最近「青空文庫」という,著作権の切れた小説等を電子化しているぺいじを見つけました.ここで紹介している小説も掲載されています.ぜひ訪れてみて下さい.
また,縦書きで読むことのできるあぷりけいしょん T-Time もおすすめです.
- 御宿かわせみ(平岩弓枝)
大川端の宿「かわせみ」に出入りする真吾が活躍する人情捕物帖
- 鬼平犯科帖(池波正太郎) 文春文庫
己の中の悪と正しく折り合いをつけて江戸の悪を裁く鬼の平蔵のかっこよさ.市中の町並みや周縁の田舎の景色,江戸の食べ物が目に浮かぶ.てれびどらまも良いが,小説で読むとまた格別.全二十四冊
- 浪花諸人往来 浪花の源蔵捕物帖(有明夏夫)
明治初期の大阪を舞台にした元岡引”耳なし源蔵”の捕物帖
- 骨よ笑え(有明夏夫)
- 西鶴人情橋(吉村正一郎) 講談社
- 深川澪通り木戸番小屋(北原亞以子) 講談社文庫
木戸番小屋のわけあり夫婦が見守る下町の人情を描く物語.二冊目の「深川澪通り燈ともし頃」も文庫版で出ました.
- 江戸風俗物語(岡本綺堂)
- 桃尻語訳 枕草子(清少納言原作 橋本 治訳)
- 桃尻語訳 徒然草(兼好法師原作 橋本 治訳)
上と同じく不朽の名作徒然草を現代の生臭坊主がかたればこうなる.
- 雨月物語(上田秋成)
原作を読むこと.美しい文章とは裏腹におどろおどろしい物語がつづられている.夏の夜には最適の一冊.
- 韓非子
翻訳で宜しい.韓非が人間性悪説の立場で考察した法律論.人間ほど信頼できないものはないことを様々な寓話で説明している.
- 新宿馬鹿物語(半村良) 文春文庫
新宿のばあをめぐる人々の話.こういうのが「馬鹿」なら俺たちっていったい… 前編の「雨やどり」(第1話のみSF風味),後日談の「たそがれ酒場」(中央公論社)もおすすめ.
- 大菩薩峠(中里介山) 富士見書房時代小説文庫→ちくま文庫
人間界の曼陀羅.続きを読みたくとも作者は既にこの世にいない.全二十冊.
- なめくじ長屋捕り物さわぎ(都筑道夫) 角川文庫→光文社時代小説文庫
江戸の巣乱(すらむ)を本拠地に砂絵のセンセーらなめくじ連が活躍する捕物帖不尻(しりいず).このぺえじのあて字はこの本のまねです.「云々砂絵」の題名で十冊ほど出ている.
- どぶどろ(半村良) 新潮文庫?(品切?)→広済堂出版
江戸の巨大な影に抹消されていった市井の人々の日常を丁寧に描いた小品集.
- 吉原御免状(隆慶一郎) 新潮文庫
江戸の不夜城吉原に隠された秘密とは?貴種流離譚の一.力強く爽快.続編に「かくれさと苦界行」.作者にはもっと長生きして欲しかった.
- ゴーマニズム宣言(小林よしのり) 扶桑社,小学館
己の怒り方まで真似有(まにゅある)に頼るようにならないために.現在十二冊.
- ニセ学生マニュアル(浅羽通明) 徳間書店
こんな批評ができれば教員汗だく,学生も汗だく.「死闘篇」,「逆襲版」も面白い.八年ぶりに新版が出るらしい.
- ソラリスの陽のもとに(スタニスワフ・レム) 早川 SF 文庫
「他者の理解」って軽々しく言えるのか.隣人とソラリスの海とどちらが遠い?
映画「惑星ソラリス」の原作.
- さぶ(山本周五郎) 新潮文庫
さぶっていうのは sub なんだろうな.めいんとさぶをめぐる友情話.長谷川平蔵が作ったと云われる人足寄せ場も舞台の一.
- 獄医立花登手控え(藤澤周平) 講談社文庫
柔の達人で若き獄医の立花登が江戸の町を明るく力強く駆け抜ける.全四冊.
- 彫り師伊之助捕り物覚え(藤澤周平) 新潮文庫
悲しい過去を持つ版木彫りのもと岡っ引きが江戸の暗黒に一人立ち向かう.全三冊.
- ペガーナの神々(ロード・ダンセイニ,荒俣宏訳) 創土社→早川 FT 文庫
この世は偶然と宿命が賽子を振ることで始まった.しかしどちらが勝ったのか,誰も知るものはいない.まあな・ゆうど・すうしゃいの眠るもと,人間界を造った小さき神々のたわむれを描く現代の神話.
- 聊斎志異(蒲松齢,柴田天馬訳) 角川文庫
幻想がまいなーな時代があった.現実との糸が切れた幻想を狂気という.狂気の迷い凧が乱舞する現代,幻想がいかに狂気を引き留め得るかを考えながら読むのも一興.全四冊.
- 死者の書(折口信夫) 中公文庫版全集廿四巻
- 能登怪異譚(半村良) 集英社
- 至福千年(石川淳) 岩波文庫
正誤表までつける念の入れように,作者編集者もろとも文章に対する気の入れよう,幕末のきりしたん達による夢の楽園の実現は,石川淳の言葉とともに暗幕簾(くらいまっくす)に向かい突進する.石川淳の文章を読んだ後は,しばらく他の本を読めなくなる.
- 半七捕物帳(岡本綺堂) 光文社時代小説文庫
捕物帳の元祖.明治の新聞記者のめもを借りて,もと岡っ引きの半七老人が幕末の風物を背景に活躍した事件の数々.全七冊.
- 夢の丘(アーサー・マッケン,平井呈一訳) 創元推理文庫
小説家を志し倫敦に出てきた青年の現実と狂気との葛藤の物語.
- 小説浅草案内(半村良) 新潮文庫
住む町が好きになるってどういうこと? 町の持つ風の吹きようと,まわりの人たちとの人情の通いかたが好きになるってことさ.
- 下町探偵局(半村良) 角川文庫
下町両国に探偵社を開いてしまった下町(しもまち)誠一.いわくありげな棲太夫とともに解決する事件は痛みを伴うものが多い.
- ゴーマニズム宣言スペシャル 脱正義論(小林よしのり) 幻冬舎
「支える会」の運動とは何だったのか.「運動」の持つ闇に焦点をあてた濃い書物.浅羽通明,泉谷しげる,呉智英の錚々たるめんばあの解説もあり.企画の大月隆寛に拍手.後書きも泣けました.
- 思想家志願(浅羽通明) 幻冬舎
原理三面くりあした著者が放つオウム的なるものへの思想的批判の書.
- 乱歩と東京 1920 都市の貌(松山巌) PARCO 出版→ちくま文庫
江戸川乱歩を通して 1920 年代の東京を投射する.高等遊民の末裔は今いずこ.
- ユング自伝1・2(ヤッフェ編,河合隼雄他訳) みすず書房
分析心理学の創始者ユングの自伝.現実と幻想の折り合いをいかにつけていくかを記した自己確立の書.
- ユング−地下の大王(コリン・ウィルソン,安田一郎訳) 河出文庫
- 理科系の文学誌(荒俣宏) 工作舎
『幻想文学とは,幻想科学のはるか遠い「詩のことば」にすぎない.』博覧強記の怪人荒俣宏による十九世紀博物学の再興.
- 第一阿房列車,第二阿房列車,第三阿房列車(内田百けん) 福武文庫
借金の天才内田百けんが金を借りて巡る全国各地の鉄道の旅随筆集.
- 科学革命の構造(トーマス・クーン) みすず書房
科学の大転換機におけるパラダイムの変更という概念について解説した先進的書物
- 公事宿事件書留帳(澤田ふじ子) 廣済堂文庫
京都の公事宿「鯉屋」の居候田村菊太郎が次々起こる難事件を解決していく.現在文庫では「闇の掟」「木戸の椿」「拷問蔵」が出ている.
- 室町記(山崎正和) 朝日選書
単なる乱世としての室町時代の見方を大きく変えてくれる一冊.
- こころの処方箋(河合隼雄) 新潮社
厳密に議論するのではないけれど,でも「ああ,これは正しいように思える」と感じさせる臨床心理学者のエッセイ集
- 街道をゆく(司馬遼太郎) 朝日文芸文庫(文庫)
司馬の紀行文.少なくとも自分の出身地のあたりのものは読んでおくこと.福島出身ならば文庫33巻,白川・会津のみち.現在37巻.
- 日本外交 現場からの証言(孫崎 亨) 中公新書
外交官が語る対外交渉における日本の外交政策の裏舞台.
- 菊と鷲(佐藤隆三) 講談社
弱い日本が強いアメリカといかにすれば共存できるか」.その知恵を語る.
- 朝鮮民族を読み解く(古田博司)筑摩書房
- 人間を幸福にしない日本というシステム(ウォルフレン) 毎日新聞社
アメリカ的民主主義からの日本的官僚主義への批判.このような見方もあるのだという程度に読んでください.
- 古事記
原文でなくとも例えば「田辺聖子の古事記」(集英社文庫)でよい.日本古来の神々の何と猥雑なことか.我々が彼を崇めてきたことにその器量の大きさを感じられます.
- 今昔物語
原文でなくとも例えば「田辺聖子の今昔物語」(角川文庫)でよい.日本古来の物語の原点.よく知っているエピソードもこの中に.
- 小説十八史略(陳 舜臣) 講談社文庫
中国の伝説の時代からの歴史を綴り続けた書「十八史略」を簡明にそして,丹念な解説付きで読ませてくれる本.4文字熟語の起源の宝庫.(全6巻)
- 項羽と劉邦(司馬遼太郎) 新潮文庫
秦の始皇帝の末期から漢の成立までに覇を争った項羽と劉邦の物語.中国の壮大な景色が目に浮かぶようである.(全3巻)
- 吾輩は猫である(夏目漱石) 講談社文庫等
言わずと知れた夏目漱石の代表作品.夏目漱石はこれに限る.読まなきゃ日本人ではない.
- 黒後家蜘蛛の会(アイザック・アシモフ) 創元推理文庫
アイザック・アシモフが書き下ろす推理小説の短編集.サロンに集まる紳士たちが持ち込む困難な問題を給仕がずばり解決していく.必要かつ十分な条件で明快ななぞ解きがすばらしい.
- 大鏡
南北朝の動乱を事細かに記述した史書.訳で少しは読んでください.
- 増鏡
南北朝の動乱を事細かに記述した史書.訳で少しは読んでください.
- 太平記
鎌倉末期から室町幕府成立までの歴史を記述した史書.現代語訳が多く出てます.
- 古今和歌集
- 新古今和歌集
- 東海道中膝栗毛(十返舎一九) 岩波文庫
ご存知やじさん,きたさんが東海道を旅する物語.原文を読むこと.江戸時代の庶民の猥雑さが伝わります.
- 彩色江戸物売図絵(三谷一馬) 中公文庫
江戸の物売りを色付きの絵で紹介するもの.見て楽しい本.
- 復元江戸生活図鑑(笹間良彦) 柏書房
江戸庶民や武士などの暮しぶりを著者による細密な絵で説明したもの.江戸時代を実感させる本.これも見て楽しい.
- 太陽の戦士(ロースマリ・サトクリフ) 岩波書店
ローマ時代末期,ゲルマン民族の大移動のころのイギリスを舞台にある少年が様々な苦難を乗り越え戦士になる物語.このころのイギリス付近の歴史的状況も克明に記述され面白い.
- 平家物語
極力原文で.特に冒頭を暗唱できるようにしておくこと.
- 奥の細道(松尾芭蕉)
芭蕉の傑作.これも原文で.特に冒頭を暗唱できるようにしておくこと.
- 好色一代男,好色一代女,日本永代蔵(井原西鶴) 例えば岩波文庫
井原西鶴の江戸時代の艶っぽい話や大阪の商人根性などを描く.原文で.
- 曾根崎心中,心中天の網島,冥土の飛脚(近松門左衛門) 例えば岩波文庫
浄瑠璃の外題書きの第一人者.当時の様々な事件をすぐに取り上げる当時の人気作家です.心中物が得意?
- 方丈記(鴨 長明) 岩波文庫など
「ゆく河の流れは絶えずして,・・・」で始まる下賀茂神社の神職であった鴨長明(一般にはかものちょうめいと呼ぶが,かものながあきらが正しいらしい)が人生の無常を書き綴った名文.短かく,原文必読.
- 五重塔(幸田露伴) 岩波文庫など
幸田露伴の漢文調の文章.五重塔を作りたいという職人たちの思いの絡み合いをこきみよい語り口で読ませる短編.
- 舞姫,雁(森 鴎外) 講談社現代文学全集など
森鴎外の傑作として紹介されることの多いものです.が,内容は読んで面白いというほどもない気がします.なにか吹っ切れないものがあるようで私にはあまり合いません.しかし,文章は絶品というべきでしょう(特に舞姫).こういう文体はどこに消えてしまったのでしょうか.このような下手な文章しか書けない私にはきっとこのような型の習得が不足していたのでしょう.
- 別世界通信(荒俣宏) 月刊ペン社→ちくま文庫
- 高瀬舟,最後の一句,山椒太夫(森 鴎外) 講談社日本現代文学全集など
あの森鴎外の歴史小説の私が面白と思うもの.これらは小説として読めるもので短編です.教科書などでも一部が採用されているようだが,これら3作ぐらいは通読してください.文学史などではこのほかに阿部一族などが挙げられているが,私は小説としてはこれは読めない.歴史資料のややくだけたけたものという感じがします.それならば,わたしは「ぢいさんばあさん」がほのぼのとしたものを感じられるので好きです.ところで,鴎外って離婚歴があるのか.えっ,隠し妻もいたの.ああ,それでヰタ・セクスアリスか.
- 花伝書 (世阿弥) 角川書店 日本古典鑑賞講座など
能のエッセンスを花にたとえてかたる名著.
まずは多くの型を身につけよと説く.その型を順繰りに現せば,聴衆は初めてのように感じ面白く見せることができる.
また,異型なものだけを習得し,聴衆に見せ続けるとついにはそれがあきられ,行き詰まる.だから,型を身につけ,ほとんどの場合型通り行い,時折,それを崩すと面白く見せられる.など今の似非芸能人が読めばきっと人前などに出られなくなるようなことが書かれています.あっ,これって,今の教育にもあてはまるんちゃうか.おっと,「秘すれば花なり」.さらに,観客側の質が問われるとも・・あなたは性花ですか,用花ですか.
私はまだまだ下三位です.はい.日本の芸能(敢えて芸術とは書きません)史に輝くこの書を是非ご一読ください.
- 大阪弁おもしろ草子(田辺聖子) 講談社現代新書
これを書いている大阪出身のこの私が先に紹介せねばならないはずの大阪弁を紹介した本がすでに鈴木先生の「私の本棚第1期128冊」で挙げられてしまいました(田辺聖子の「大阪弁ちゃらんぽらん」)しかし,めげずにこの本を挙げておきます.いま,大阪弁は危機に瀕しているようにみえます.
「こおた」を「買った」,「ほる」を「捨てる」,「かんとだき」を「おでん」などとゆうてるそこのあかんたれ,おまえらどこの人間や.けったくそわるい.ほんまによういわんわ.いっぺんいてこましたろか.
といいたくなります.ほんまの大阪弁よ,残ってくれ.悲痛な願いです.できれば,船場言葉なども復活して欲しいのですが.ともかく,この本を「たんの」しておくんなはれ.
- 野ざらし紀行,鹿島詣,笈の小文,更科紀行(松尾芭蕉) 岩波文庫など
芭蕉の紀行文は奥の細道がその最高傑作です.しかし,ここに挙げた紀行文もなかなかなもので,芭蕉の美的感覚がここかしこに綴られています.
・野ざらしを心に風のしむ身哉
・旅人と我が名よばれん初しぐれ
などの名句が収められています.どうぞ原文で.
- 姥ざかり,姥ときめき,姥うかれ(田辺聖子) 新潮文庫
76歳(以上.作品の中で年をとっているから)の歌子さんからみたよしなしごとを痛快に書き綴ったシリーズ.なんせ歌子さんは今は西宮のマンションに楽隠居だが(ええとこに住んでるやんか)戦後戦災で失った服地問屋を番頭と二人で再興したつわもの.アカンタレの息子やその嫁たちそして,頼りない近所の老人たち(勿論,歌子さんも外見は老人だが,中身は全く違うものらしい)を一喝し,悠々生きている様は,面白い.こんな婆さんがいたら友達になれる・・かな.
- 土佐日記(紀貫之)角川文庫ソフィアなど
「男もすなる日記といふものを,女もしてみむとて,するなり」という書き出しで始る有名な紀行文.なぜ,男がわざわざ女の振りをして書いたのかはよくわかりません.が,これを読むと今や船でも1日の行程である土佐から京までの道のりを約2ヶ月半かかって船で移動する平安期の旅の大変さがよく分かります.途中海が荒れて何日も同じところにとどまったり(都合で出港しなかったときもあるようです)海賊に恐れおののいたり,また,途中で旧国司であった貫之に惜別の宴を開いたりしたことがわかります.
その分,京にたどり着いた時の感激はひとしおであったろうことは想像に固くありません.この優雅な旅(従者までも歌を詠む)の記録をご一読ください.
- 父の終焉日記,おらが春(小林一茶)岩波文庫など
前者は一茶が病に倒れた父を介抱し,その死を看取った時に起こるよしなしごとを俳句を織り交ぜ書き綴ったものです.父と継母の間に相続をめぐってのいさかいが起こるなど,一茶の境遇の辛さがひしひし感じられます.後者は56歳でもうけた娘の誕生とその死を主題にして書かれています.これもこの題名からうける印象とは違ってやはり苦しみが現れている.「我と来て・・・」などは自分の境遇と親を失ったすずめとを重ねあわせた哀れな詩なのです.「やさしい一茶」などはここには微塵も見られないわけで,やはり原文を読まなければならないでしょう.
- 虚無への供物 (中井英夫) 講談社文庫
- 未来のイヴ (ヴィリエ・ド・リラダン,斎藤磯雄訳) 東京創元社
「せいかつ?そんなことは家来どもにまかせておけ」とうそぶいて高踏に生きたジャン・マリ・マティアス・フィリップ・オーギュスト・ド・ヴィリエ・ド・リラダン侯爵の記すヱヂソンと未来のイヴの物語.日夏耿之介の弟子である斎藤磯雄の訳も秀逸.文庫でも出ているはず.
岩波文庫97年秋の復刊に渡辺一夫訳が出ます.
- 月と不死 (ニコライ・ネフスキー,岡正雄編) 東洋文庫 185
- ポンド氏の逆説 (G.K.チェスタトン,福田恆存訳) 創元推理文庫
- 木曜の男 (G.K.チェスタトン,吉田健一訳) 創元推理文庫
- ブラウン神父シリーズ (G.K.チェスタトン,福田恆存.中村保男訳) 創元推理文庫
- ゴーレム (グスタフ・マイリンク,今村孝訳) 河出書房新社
- 指輪物語 (J.R.R. トールキン,瀬田貞二訳) 評論社文庫
- リリス (ジョージ・マクドナルド,荒俣宏訳) 月刊ペン社
- 物語ポンス・ピラト (ロジェ・カイヨワ,金井裕訳)
- まっぷたつの子爵 (イタロ・カルヴィーノ,河島英昭訳) 晶文社
- 木のぼり男爵 (イタロ・カルヴィーノ,)
- 見えない都市 (イタロ・カルヴィーノ,米川良夫訳) 河出書房新社
- 空海の風景 (司馬遼太郎) 中央公論社→中公文庫
- 伝奇集 (ホルヘ・ルイス・ボルヘス,鼓直訳) 岩波文庫
ボルヘスが好きになりそうなら,集英社版の世界文学全集の一冊がおすすめ.一冊で三冊分楽しめます.
- 流れる (幸田文) 文庫
- 天使の王国 (浅羽通明) 幻冬舎文庫
「私の本棚 II」に先に内容を書かれてしまいましたので,題名だけにしておきます :-P
題名だけ出しておいて内容を書かないのは自分でも癪ですが,機が熟したら書きますので今しばらくの猶予を.
- 宇治拾遺物語(中島悦次校注) 角川文庫ソフィア
今昔物語と同様の説話集.鎌倉時代に成立したとか.中には瘤取りの翁の話など良く知られている話もあります.今昔物語と同様,なにやら不思議な話が盛り沢山で現代では味わえない感覚を味わえます.我々の祖先は平安から鎌倉時代にはこんなことを見聞きしていたのでしょうか.簡単な文書で短文続きなので是非,原文で一読を(前に今昔物語を原文でなく・・と書きましたが,やはり原文の方が良いでしょうね).
- 大阪ことばあそびうた(島田陽子/絵・阪口真智子)編集工房ノア
- 続大阪ことばあそびうた(島田陽子/絵・阪口真智子)編集工房ノア
ことばあそびで面白い本は谷川俊太郎の「ことばあそびうた」(鈴木敏朗先生の「私の本棚第一期128冊」参照)が出色の出来だと思います.しかし,この大阪ことばによることばあそびは大阪弁の妙を味あわせてるという意味で非常に出来が良いものだと思います.
例えば
まっか
まっか
まっかうり
たきまっか
とろり ひやして
たべまっか
…
などというのは大阪弁ならではの言い回しが生きています.
ただし,大阪弁が分からない人にはちょっと分からない部分が多いかも知れません.是非お近くの大阪の方に読んでもらってください.なかなかななめらかに柔らかなテレビの吉本なんかでは味わえない大阪弁を聞く事が出来ます.今,大阪の人が失ってしまった懐かしい大阪弁がそこに有ります.
そやそや,そういえばこんなんもあったな.
畳屋町 あれへん
東心斎橋や
炭屋町 あれへん
西心斎橋や
周防町 あれへん
アメリカ村や
なんでや
ふるいまちの名 きらいなんやな
- 夢の代(山片蟠桃)
山片蟠桃(やまがたばんとう)は江戸時代の大阪の商人です.升屋という大きな商家の親戚筋だったのですが,升屋の経営が悪化して来たのでその建てなおしをするために升屋に入って見事にそれをやってのけたという人なのですが,何とこの人がなかなかの才人で大変な勉強家でした.この「町人学者」が書いた本が夢の代です.彼独特の哲学がそこに詰め込まれており,しかし,その論証には多くの書物を読んで考えぬかれ圧倒的な力強さを感じる事が出来ます.
本文は長大なものですので,その一部でもどうぞお読みください.
- 保元物語 岩波書店 新日本古典文学大系など
- 平治物語 岩波書店 新日本古典文学大系など
- 承久記 岩波書店 新日本古典文学大系など
保元(ほうげん)物語は,崇徳上皇と後白河天皇の間に起こった政争による戦である保元乱を物語ったもの.この戦ではの後白河側の平 清盛,源 義朝軍が崇徳上皇側の源 為義,為朝軍と戦って勝利するが,義朝が為義,為朝ら実の親兄弟を全て誅殺するはめとなり,その為,平家が勢力を増していったのです.比較的,淡々と書かれていますが,為朝射る矢の威力の記述も的確でまたその淡々さが実の親兄弟を自らのてで殺していく義朝の悲哀を強調させています.
平治物語は信西と藤原信頼の権力抗争に夫々に平 清盛,源 義朝が味方し起こした戦である平治(へいじ)乱を物語ったもの.こちらの方がより物語的に書かれており,中でも平 重盛軍と御所に立てこもる信頼・義朝軍との戦いの場面は読み応え十分です.悪源太義平の奮戦ぶりが気持ちよい.この戦で源氏は殆どが処刑され,衰退してしまうのですが,幼い頼朝,牛若らが命を助けられ伊豆への流刑されたり寺に預けられたりします.こらが後に平家を滅ぼしていくというところまで書かれています.
承久記は鎌倉幕府成立後,復権を狙い兵を集めて幕府に対抗しようした朝廷側を北条氏を中心とする幕府軍が圧倒的な軍事力で破ってしまう承久乱を記したもの.これも淡々とした記述です.
これらのうち平治物語が読み物としてなかなかよい出来のように思われます.原文にてご一読を.
- 幻の声 髪結い伊三次捕物余話(宇江佐真理)文芸春秋
この本は幼児教育の鈴木先生に教えて頂きました(本当はこのリストにある本の幾つかは鈴木先生に教えて頂いたものです).最近,良い小説がないない,と言っていましたが,この本はなかなかの力作です.オール読物新人賞受賞と言うところが良いですね.なんせ,白石一郎などが入って審査しているもんですから,文章の巧さで信頼できるような気がします.そう言えば,池波正太郎もオール読み物のなんとか賞を受けていたっけ.
書名ともなっている「幻の声」という一編の冒頭では匂いを巧く記述してその情景を描き出しているのですが,これが逸品です.深川芸者の文吉もなかなか色っぽく良いですね.このシリーズが次々と出る事を祈ります.
- 荒木叉右衛門(上・下)(長谷川 伸)講談社 大衆文学館
著者長谷川伸(はせがわしん)は明治17年生れ,昭和38年没の大衆小説作家です.そして,なにより池波正太郎が師と仰ぐ物書きです.池波正太郎が上述しているとおりの巧い物書きなのですから,その人が師と仰ぐ物書きは一体どんなものを書いているのか,というのは前々から気になっていました.ちょうど,それが大衆文学館と言う文庫本で出たので読んでみたのです.
やはり秀作です.隙のない文で巧みに読者を引きこみ,読み応え十分.
しかし,上下に別れている中で主人公であるはずの荒木叉右衛門の活躍は殆ど下巻のみ.殆どの部分では鍵屋の辻の仇討ちに至るまでの経過を敵である河合叉右衛門と渡辺数馬の周辺を中心に描写しています.しかし,荒木叉右衛門の助力が下巻で書かれだすと的確に叉右衛門が描かれ,中心になって来るという,そして,それまでの記述が返って叉右衛門を浮き立たせるという「巧い」の一言につきる文章です.そこかしこに註が書き込まれており,相当の下調べの後に書かれた事もうかがわせます.
- 西行物語(全訳注 桑原博史)講談社学術文庫
西行(さいぎょう)は平安末期の人物で北面の武士であったのですが,妻子や地位を捨てて出家した人物でして,歌人として有名な人です. 後の世の「山家集」,「新古今和歌集」等に入集され,あの芭蕉も西行に深く影響されていました. 和歌や俳句を読むうえでは欠かせない人物で,一応のことは知っておく必要が有るでしょう.
この物語は西行の発心からその死までを描くものです. 鎌倉時代に成立したもののようです. 物語として書かれているようで,事実とは異なる記述が多々ありますが,この本ではそこを注で補ってくれています. 比較的平易で読みやすいので,ご一読ください.
- 江戸前食物誌(池波正太郎)角川春樹事務所 ランティエ叢書
この本は池波正太郎が食べ物について書いた随筆の幾つかを選びまとめたものです. 江戸前,とは言っても江戸前の魚に限るとかいう類いの話ではなく,一般に池波氏の食べ物に関しての記憶や考え方の著作集で,恐らく池波氏が江戸ッ子であるために編集者がこのような書名にしてしまったのでしょう.
ここには所謂「グルメ」などからは掛け離れた,しかし,本質的に旨そうなものが書かれています. 今時,雑誌やテレビなどで紹介されている店や食べ物はどうも「東京の食べ物」と言ってもよいでしょう. なんせ,どうも肉食やスナック菓子,合成香料・人工調味料で味付けされた即席食品などで慣らされた「東京(東京には限らないけどね)人」が旨いというものであるし,また,宣伝費を取って取材をしているのではないかと邪推したくなるようなマスコミの紹介するものなんですから. ところが,この本の池波氏は「江戸」の食べ物や食事に対する考え方を示していると私は思うのです. 「江戸」の食べ物,というのは江戸時代から続いている食べ物,という意味ではありません. 江戸(あくまでも東京ではない)の人々が守り伝えた味覚にあった食物,料理という事です. ですから,特に和食に限らず洋食でもこの人達が好みとするものはやはり江戸の食べ物とよんでも差し支えないでしょう.
私は上方者で少し前まで「東京の食べ物は味が濃く,旨いものはない」と思い込んでいました. しかし,その思い込みを崩したのが「藤村(ふじむら)」の羊羹です. これは砂糖を使わない江戸時代からの製法を今に守る由緒正しい江戸の羊羹で,普通の練り羊羹の様に甘ったるくはなく,非常に上品このうえないものです. これを口にした瞬間「これが江戸の食べ物だ」と思えたのです. それ以来,私は「江戸」の食べ物が好きになりました. 「藤村」の羊羹以外に私が好むのは「舟和(ふなわ)」の芋羊羹.是非,ご賞味ください. おいおい,そこの人.うまい羊羹なら「虎屋」なんぞに行っちゃあだめだよ. 「藤村」へ行かなきゃあ.なに,「藤村」が閉まってるって. どうしたんだろう・・・・・・.
- 『大学で何を学ぶか』 (浅羽通明) 幻冬社
ガクモンとかケンキュウとかの背後に厳としてある社会の中から大学を位置づけ,大学を通過して社会に出ていく者の視点から書かれた本.
- 木に学べ(西岡常一)小学館
西岡常一氏はもうお亡くなりになりましたが,宮大工の棟梁でした. 宮大工とは寺社を専門に建築,補修する大工です. 法隆寺の宮大工棟梁の孫として生を受け,祖父に鍛えられて法隆寺の昭和の大修理に携わったのは勿論,各地の寺社の修理,再建にかかわってきました. 中でも薬師寺の西塔の再建及び伽藍復元を手掛けておられたのは有名です. 奈良の薬師寺にはかつて東西の二つの塔が存在したのですが,西の塔は焼失し,東塔が残っているのみでした. 金堂や回廊なども失われた状態でした. その伽藍再建が始まったのは1965年から. そして,1980年に西塔が再建され,再び薬師寺に二塔がそびえたちました. 伽藍再建は続いていますが,西岡氏は途中で亡くなりました. その西岡氏の話を纏めたものがこの本です.
氏によれば,法隆寺の大修理の際,飛鳥,藤原,室町の各時代の建築物を解体修理しなければならなくなったそうですが,飛鳥の物は千三百五十年年もったのに室町の物は六百五十年”しか”もたなかったそうです. これは飛鳥の物が構造を考えて作られているのに対し,それ以降の物は装飾に重きをおいて建てられたものだからといいます. 飛鳥のもののように桧の大木をつかって構造をしっかり考えて作れば千年は十分もつものができる. まさに法隆寺の建物がそうなのだが,現代の建築家や学者はその事実を無視し,西洋的な建築技術に頼っている. いれるのは良いことがあるかもしれないが,日本の風土を無視してそのまま使おうとする. 氏はそう語ります.そして更に
「コンクリートの基礎のうえに木の柱を建てたら木が腐る. 従来工法通り石のうえに建てた方が良い」
「現在の建築基準法,あれはデタラメもはなはだしい. 民家になる木一本育てるのに60年かかるんや. …今の木造建築でやったら25年でだめになる.…ちゃんと作れば二百年はもつ.」
「ここのはまだ新品だから鉄骨の補強の必要はない.… 鉄いうても,昔の飛鳥のときのようにタタラ踏んで,砂鉄から作った和鉄なら千年でも大丈夫だけれども,溶鉱炉から積み出したような鉄はあかんというのです」
などと,宮大工の経験を確信をもって語るのです.
そして
「今の学問は信用しません.我々の伝統が,千二百〜千三百年来の法隆寺を支えてきたんや. そうした工法こそ信用するが,今の学者たちの学問は信用しません.」
「仕事をしているのは,伝統の技法を伝承しているわしらや. それなのに学者が,大工のうえにすわっているというような顔しなはんな」
とも語ります.誠に説得力があると思いませんか.
この本には棟梁の口伝が紹介されています. その一つに「堂塔の木組みは木の癖組み」というのがあります. 右にねじれる木ばかりで建物を作ると全体が右にねじれる.右にねじれる木と左にねじれる木を巧く組み合わせなければ真っ直ぐな建物にはならない,という事らしいのです. これは人間社会でも同じ事が言えそうですね. また,「堂塔造営用の用材は木を買わず山を買え」というのもあります. 木というのは土質や環境によって木の質が違い癖が違ってくる. 交ぜて使ってはいけない,ということだそうです. 人間も,育って来た環境を見てやらないといけませんよね.
その西岡氏も逝き,既に桧の大木は日本になく(薬師寺などに使った桧は台湾さんの物だったそうです),いま林業は風前の灯火となり,鋸の目もたてられないような大工が多くなり…我々の伝統の技法は残せるのでしょうか.
文章というよりは,中身を味わってください.
- まざあ・ぐうす(北原白秋訳) 角川文庫
まざあ・ぐうすはご承知の通り英国のぐうすおばさんが作った子供に読ませる童謡(と白秋は言っています)を纏めて出版したものです. 原文では英語のことば遊びで,なかなか楽しいものです. 内容はちょっと残虐なものも含まれるので,これを子供に読ませるのもなにかな,と私は思うところがあるのですが. このまざあ・ぐうすを北原白秋は大正の世に日本語訳したものがこれです. 白秋自身もこの本の「巻末に」で語っているように,英語のことば遊びの部分をそのままではなく日本語風になおして,そして日本語調で訳しています. いや,訳すというより,ほとんど創作した物といって過言ではないと思います. あの白秋が心血を注いで(というふうに私には感じられます)訳すと,完全にマザー・グースが「まざあ・ぐうす」になるわけです.分かって頂けるでしょうか. 安直な訳より,ずっと美しい(楽しい)ものに仕上がっていると思います.どうぞ,声に出してうたってごらんなさい(と「はしがき」にも書いてある).
- 木(幸田 文)新潮文庫
幸田文は前の方で紹介した幸田露半の次女で,やはり物書きです. 上の方でも紹介した小説を書いています(この紹介は福島大学教育学部の篠田先生がお書きになったものです). 余りに美しい文章なので私(林)が随筆のほうを紹介します.
この文章は木(植物)に関して見聞きしたことを題材に書かれた随筆で,晩年の物です. 著者は晩年に大樹や山の景色を見るのを趣味としていたようで,各地を飛び回った記録がこれです. 文章,文体は何とも言えず美しい. 今の物書きがどう書いても,太刀打ちできないような気がします. この美しさは著者に生まれつき備わった才能としか思えない. ただ,感覚は非常に繊細で,私には息苦しさを感じるところもあるのですが,なんせ美しい文章なので読んでみてください.
- 細雪(谷崎潤一郎)新潮文庫他
- 春琴抄(谷崎潤一郎)新潮文庫他
谷崎潤一郎は東京の生まれです. 関東大震災の折,大正十二年に京阪神に移住しました. その谷崎が大阪,神戸(芦屋)を舞台にして没落した名家の三姉妹が織りなす物語が細雪(ささめゆき)です. 東京生まれの人が書いたとは思えない大阪弁の感覚,京阪神地区の地名や風物が描き込まれてなかなかの逸品だと思います. 大阪生まれの私(林)には地図や注を見なくとも,思い起こす事の出来る地名が多く出て来ますのでそれに慣れないと読みにくいやも知れませんが,明治大正期の古き良き大阪の描写を是非読んで頂きたいものです.
春琴抄は春琴という江戸末期の大阪の琴の女流名手についての記録的物語です. 春琴に仕えていた女中の話しなどを元にして考察しているので,信頼できるものなのでしょう. こちらは短いものですので,お暇があればご一読を.
- たけくらべ(樋口一葉)角川文庫クラシックス他
- にごりえ(樋口一葉)角川文庫クラシックス他
- 大つごもり(樋口一葉)角川文庫クラシックス他
文学史にはかかせないこの人の作品は必読書でしょう. まさに口調のよい流れるような文語調で,美しい文章が続きます.
- 銀河鉄道の夜(宮澤賢治)角川文庫クラシックス他
- セロ弾きのゴーシュ(宮澤賢治)角川文庫クラシックス他
- 注文の多い料理店(宮澤賢治)角川文庫クラシックス他
- 風の又三郎(宮澤賢治)角川文庫クラシックス他
- どんぐりと山猫(宮澤賢治)角川文庫クラシックス他
- 春と修羅(宮澤賢治)新潮文庫他
宮澤賢治といえば世界に名だたる童話作家(?)です. どう考えても近年ノーベル賞をとった某氏など,足下にも及ばないと思います. さて,その宮澤賢治を挙げるか否か随分迷いました. 余りに有名すぎて,そして信奉者が多すぎるような気がして,そんな垢がついている人をなるべく避けてきました. しかし,やはり世界的に読まれている人ですので,それだけの魅力が有るわけです. それには抗し切れませんでした.
多くの著作のなかから,これだけはというものを挙げてみました. この中で春と修羅は詩集です. やはり独特の感覚の持ち主らしい,独自の世界を作り上げています. 恐らく,一度読めば止められない人が多いと思います. どうぞ,のめり込んでみてください.でも,他の作家も読んでくださいよ.
- 牛をつないだ椿の木(新美南吉)角川文庫クラッシックス
上で宮澤賢治を挙げたので,ここで続けて童話作家をご紹介しましょう. 新美南吉は若死にした戦前の作家です. 上で挙げた本の書名は角川文庫で出しているものでその中の一編の題名をとったものです. 勿論,これに限らず,全集などでお読みください.
南吉が亡くなったのは昭和18年で,その前まで創作活動を行っていましたので,戦時色の強い作品も多く見受けられます. 従って,「軍国主義」にアレルギーのある方には駄目なのでしょうが,それは時代と言うもののように私は思います. そのなかで,やはり良いものが書ける人は社会的圧力以上のものをそこに描き出せるものではないでしょうか.「ごんぎつね」,「てぶくろを買いに」,「花のき村と盗人たち」などなかなか良いものがあります. 是非,ご一読を.
- 日本童謡集(与田準一編)岩波文庫
- 日本唱歌集(堀内敬三,井上武士編)岩波文庫
最近の子供の唄と言うのはどういうものがあるのでしょう. まだ幼稚園へも行っていない子供をもつ私(林)にはまだよくは分かりませんが,NHKなどのテレビ番組での子供の唄と称するものを聞いた印象では,まずメロディが酷い. 今の流行唄や外国風の曲が流れ,ときにはアメリカのラップその物と思えるものまである. メロディは何処に行ってしまったのでしょうか. さらに,歌詞が酷い. 「〜しちゃったよ」,「〜だよね」などの安い語尾や安い言葉のオンパレード. 最近の大学生同志の会話程度の(というと失礼か)語彙しかないような気がします. こんなに日本語には語彙が少なかったのでしょうか.
ここで挙げた2冊の本はどちらも戦前の童謡と唱歌を集めたものです. 勿論,戦前のものですから唱歌には「軍事色」たっぷりのものもあります. しかし,ほとんどはそうではありません. これを読むと「日本語というのは美しかったんだ」という気持ちにかられます. 曲を知っている幾つかの唄を唄うと「なんて美しい旋律なんだ」と思える曲ばかりです. 古臭くてもよい. 子供にとって意味が分からなくてもよい. こんな唄を受け継いでほしい,という願いで一杯になるような本です. (それは私だけ?) そうはいっても,実は私は受け継ぎ損なった一人です. ああ,全曲唄えるようになったらなあ.
- 暖簾(高井 潔)淡交社
暖簾というのは商家などの店先につっている暖簾のことです. 各地の暖簾を写真に収め,それぞれについての小文を載せてあるのがこの本です. 実は私も暖簾が好きで,たまに暖簾の写真を撮っております. この本を見つけたときは,先を越された,という思いに駆られました. とはいうものの,年季といい,写真の数,質といい,全くお話にならない勝負なのですが.
暖簾はその店の歴史を語っています. また,その店の考え方を示しているようにも感じられます. 「のれん」の重みで誇示するような暖簾がやはり好きです. 勿論,新しくても美しい暖簾,意匠の凝らされた暖簾は好きです. やはり,商売をこうやってやっていますということを示す暖簾がかかっている店は愛着を持てます. どこかに暖簾がかかっている店がずらっと並んでいるところはありませんか.
- 御家人斬九郎(柴田錬三郎)新潮文庫
これは柴田錬三郎の晩年の作のようです. 最下級の貧乏御家人が食うためにそして,70歳を超えるのに美食かつ大食らいの母の胃袋を支えるための副業(かたてわざ)で出くわす様々な事件をばっさり片づける,気分の良い読み物です. 文章は簡潔,情緒をさほど感じさせませんが,読むものを一気に引き付ける技術は格別.ひたすら「面白い」といわせるような物書きが柴田錬三郎です. 他に眠狂四郎など有名なものがありますが,私は長編が苦手なので,短編で次々話が変わるこの御家人斬九郎を挙げておきます.
てれびどらま版もなかなか良いです.と思ったらぷろでゅうさあは「鬼平犯科帳」と同じ野村庸一だ.
- 香具師(やし)口上集(室町京之介)創拓社
香具師なんてどうしたら”やし”と読めるのでしょう。 香具師とはいわゆる露天商の人々。テキ屋とも呼ばれる人々です。 固定された店ではないので、常連客なんぞはつきはしない。 従って、大道で客を集めなければならない。 そうなると口で商売善し悪しの大半が決まってしまう。 品質なんて問題じゃあないんです。 この本はその口上やその他売り子が売り歩くときの売り声を集めたものです。 例えばがまの油売りやバナナのたたき売りに薬売り、あさり売りやアイスクリン(アイスクリームのこと。ここではどうしてもアイスクリンなのです)。 現在ではその大半が失われています。 道路が整備され、この人たちの商売の場が奪われたり、口上や売り声による販売が適当でない商品が主流になったり、売り買いする仕組みができるだけ人間同士の付き合いを避けるようになった(スーパーなど)からなのでしょう。 勿論、その時々が勝負ですから詐欺まがいのこともあったようですが、町の情景としてこういうものが失われてしまったのは至極惜しいように私には思えます。
この本にはCDがついています。 何かといえば浅草の演芸場で口上や売り声を舞台で演じて昭和57年に芸術祭大賞を受けた板野比呂志(平成元年没)のライブが入っているのです。面白いです。楽しいです。これで2850円はお得です。 是非、御一聴を。
- 貧乏は正しい!(橋本治)小学館文庫
「金で幸せは買えないけれど,たいがいの不幸は追っ払うことはできる」とは,半村良の小説の中でのせりふ.てれび版「天晴れ夜十郎」でも使ってましたね.さて,時は現代,たいがいの不幸は追っ払えはずのこの日本の若者を橋本治がどう編み上げていくか,は読んでのお楽しみ.
これ読んで元気づけられたらぜひ実行に移してくださいよ.
「貧乏は正しい!ぼくらの最終戦争(はるまげどん)」「ぼくらの東京物語」「ぼくらの資本論」も出ました.
...まだまだ続きます.
以下は数には入れませんが,お奨め本.
- ぼのぼの(いがらしみきお)
- 世界のグラフィックデザイン1 ヴィジュアルコミュニケーション(杉浦康平編) 講談社
五感がばらばらになってしまったのは誰のせい?文章を読むより頭を使う希有の本.
- 滝田ゆう作品集 双葉社
玉の井あたりの寂しく猥雑な視角から昭和の街を描いた画文集.作者は酒で逝ってしまった.「ぼくの昭和ラプソディ」,「裏町セレナーデ」の二冊.
- 風信帖(空海)
- 孔子暗黒伝(諸星大二郎) 集英社
- 童夢(大友克洋) 双葉社
あ,個人的な趣味ですね.「アキラ」の前触れともいうべき全編緊張感に満ちた傑作.
- 銀河鉄道 999(松本零二) ???
今にして思えばやはり予言の書だったのか.周りを見渡して見たまえ,機械惑星の住人がずいぶん増えているぞ...
ゴダイゴの音楽も良かったな.
- 風の谷のナウシカ(宮崎駿) 徳間書店
- 月街星物園 (まりの・るうにい) 北宋社
- 日本の傳統色 −その色と色調− (長崎盛輝) 京都書院アーツコレクション
225 種類の日本の色が,色見本とマンセルの色記号で紹介され,染色法や出典の説明がつく.今だったら RGB や CMYK だろうか.誰か卒論でやらないかな.「 Mac 書道 Pro 」には少し入ってはいるけど.
話は突然変わりますが :-P 泉鏡花を読む辞典とかないのかな.着物の生地や着付け方,髪型などの単語は文字からして華やかだけれど画像として思い浮かばないのがくやしい.半村良も時々やるし...
- ロダンのココロ (内田かずひろ)朝日新聞社出版局
犬はこんなことを考えているんだな、と変に納得する本
...まだまだ続くかも知れません.
- 個人の読書趣味を学生に押しつけるとは失礼な!
- おっしゃる通り.うらの意味をくみ取ってください.
- 時代物に偏りすぎてはいませんかぇ?
- 背景のみに気が向いてやしませんかぇ?
- なかなか百二十八冊にならないではないか!
- 素直にごめんなさい.
- ここに紹介されている本は頭がくさる本も混ざっているのではないか?
- 棲太夫は納豆も鮒寿司もぶるうちいずもくさやの干物も好きです(一部例外有り).
- アカデミズムのかけらもないぢゃないか!
- ひとはあかでみずむのみにていきるにあらず.
- 「私の本棚」に負けてますね
- うーん,年季が違うから.(あ,言っちゃった :-P)
- なぜ福島大学と秋田大学で共同するのですか?
- ひとりずつやっていると,「私の本棚」のぱわーに太刀打ちできないからです :-D
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